総務省は、「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」の見直しについて10月2日付けで発表した。この指針は、テレビ放送における解説放送、字幕放送と手話放送に関する達成目標などを定めた指針で、いわば視聴覚障害者にとってアクセシブルな放送の実現のために定められたものだ。
2007年10月30日に定められた同指針は、2008年から2017年までの期間における、解説放送、字幕放送、手話放送の実現目標値を定めた指針で、技術動向などを踏まえて 策定から5年後を目処に見直しを実施することになっていた。見直しの年に当たった今年、総務省では「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送の充実に関する研究会」を開催し、同指針の見直しを実施した。その後、パブリック・コメントを経て、寄せられた意見も踏まえて見直された同指針がこの度発表された。
今回の見直しによる主な変更点は以下の通りだ。
(1) 字幕放送
- ア NHK、地上系民放及び放送衛星による放送(NHKの放送を除く)において、大規模災害時等緊急時放送については、できる限り全てに字幕付与することを新たに目標とする。
- イ NHKにおいて、災害発生後速やかな対応ができるように、できる限り早期に、全ての定時ニュースに字幕付与することを新たに目標とする。
(2) 解説放送
普及目標の対象番組(権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組を除く全ての放送番組)について、明確化を行う。
(3) 手話放送
これまで目標の無かった手話放送について、新たに次の目標を策定する。
- ア NHKにおいては、手話放送の実施時間をできる限り増加させる。
- イ 放送大学学園、地上系民放、放送衛星による放送(NHKの放送を除く)、通信衛星による放送及び有線テレビジョン放送においては、手話放送の実施・充実に向けて、できる限りの取り組みを行う。
(後略)
解説放送について、「普及目標の対象番組」ではない番組、すなわち解説放送をする必要がない番組の明確化という点だが、見直し後の指針には次のように示されている。
- 権利処理上の理由により解説を付すことができない放送番組
- 2か国語放送や副音声など2以上の音声を使用している放送番組
- 5.1chサラウンド放送番組
- 主音声に付与する隙間のない放送番組
同指針の発表と同時に、これに先だって実施されたパブリック・コメントで寄せられた意見と、これらの意見に対する総務省の考え方も公表されている。
パブリック・コメントで寄せられた意見の中には、5.1チャンネル放送を解説放送の対象番組から除外したことで、5.1チャンネルの番組が増えれば増えるほど、全体に占める解説放送の割合は減少してしまい、にもかかわらず目標達成率の観点では数値が改善することになる、といった意図の指摘もあった。また、示されている目標値が不十分であるという指摘も見られる。