米国Freedom Scientific社は、同社が開発するWindows用のスクリーン・リーダー、JAWS(英語版)について、次期バージョンとなるVersion 15の新機能を、先頃配信された同社のポッドキャスト、FSCast Episode 81, August 2013の中で明らかにした。また、現行バージョンであるVersion 14について、Windows 8.1に対応するアップデートを行うことも明らかにした。
以下、同ポッドキャストの中で明らかにされた主な新機能について簡単に記す。
タッチ・スクリーンのサポートの追加
JAWS 15における最も大きな機能追加は、Windows 8以降の環境でのタッチ・スクリーンを用いた操作のサポートの追加だろう。ポッドキャストでは、Windows 8.1プレビュー版をインストールしたMicrosoft Surface Proを用いたデモの様子を聴くことができる。これによると、JAWSがサポートするタッチ・操作は、iOSのVoiceOverやAndroid 4.1以降のTalkBack同様、左右フリックの操作で読み上げを行うことができるが、ローター操作による動作はiOSのVoiceOverのそれとは異なったものになっている模様だ。
また、これまでのPCカーソル、JAWSカーソル、仮想PCカーソル、レビュー・カーソルに加えて、新たにタッチ・カーソルが導入されるという。タッチ・カーソル・モードに切り替えると、矢印キーでタッチ操作をシミュレートできるようになっているようだ。これにより、タッチ操作を使った方が使いやすいようなアプリケーション使用時でも、同等の操作をキーボードから行うことができるという。
点字ディスプレイに関連する機能追加と変更
点字ディスプレイに関連して、以下の機能追加や変更が行われるという。
- Freedom Scientific社以外のメーカーの点字ディスプレイのドライバーについて、現在は各メーカーからJAWS用のドライバーを入手してインストールする必要があるが、JAWS 15では、これらのドライバーはJAWSのパッケージに含まれるという。これによって、ユーザーは各点字ディスプレイのOSレベルでのディバイス・ドライバーをインストールしておくだけでよくなる。
- 現在、点字ディスプレイが接続されていない状態でJAWSが実行中の場合、点字ディスプレイを接続後にJAWSを再起動しなければ点字ディスプレイを使用できるようにならないが、JAWS 15では点字ディスプレイの接続が認識されると、再起動することなく点字表示を利用できるようになる。
- インストール直後に表示されるスタートアップ・ウィザードで、点字関連の設定も行えるようになる。
- JAWSの実行中に、点訳テーブルを切り替えられるようになる。これにより、複数の原語を扱うような場合の利便性が向上することが期待できる。
- 構造化モードのより細かいカスタマイズが可能になる。具体的には、どのような情報を表示して、どのような情報を表示しないのかという設定がより細かく可能になるという。これにより、セル数が少ない点字ディスプレイを使っている場合に、なるべく多くのセルをコンテンツ表示に利用することが可能になる。
強制終了時の動作の変更
Win+Ins+F4キーを押してJAWSを強制終了した場合の動作が変更される。
現在は強制終了して、その時の状態を記録したダンプ・ファイルが生成されるだけだが、JAWS 15においては、その後自動的にJAWSが再起動されると共に、ダンプ・ファイルがFreedom Scientific社にエラー・レポートとして送信される。ただし、エラー・レポートを送信するかどうかはユーザーが選択でき、また常に送信する、または送信しないように設定することもできるという。
ARIA landmarkに対応する新しいクイック・ナビゲーション・キー
Webブラウザーなどで使われる仮想PCカーソル・モードで、クイック・ナビゲーション・キーについて、以下の変更がされるという。
- rキー -- ARIA landmark間の移動 (JAWSではなぜかregionと呼んでいる)
- qキー -- main landmarkへ移動
- aキー -- ラジオボタン間の移動 (これまでのrキーから変更)
読み上げ履歴機能の追加
最近読み上げられた文字列を確認できる機能が追加される。
この機能を使うと、音声合成エンジンに送出された直近50の文字列を確認することができる。また、これらの文字列をクリップボードにコピーすることも可能だという。バルーン表示されてすぐに消えてしまうようなエラー・メッセージの確認などへの活用を期待できる。
最近の読み上げ内容の確認は、点字ディスプレイを使っている場合にはこれまでも可能だったが、音声出力のみを用いている場合には不可能だった。
Vocalizer Expressiveに対応
新たな英語音声合成エンジン、Vocalizer Expressiveに対応する。
JAWS 14でVocalizer Directに対応したが、JAWS 15ではこれに変わってVocalizer Expressiveに対応する。Vocalizer DirectをはじめとするSAPI5の音声合成エンジンの場合に不可能だった、1文字ずつ確認する場合に大文字ではピッチを高くするといった制御が可能になるという。
その他
これらに加えて、以下の点についても同ポッドキャストでは触れられいた。
- Skypeのサポートの強化
- FS Readerのバージョンアップ
JAWS 15 (英語版) は、Windows XPからWindows 8.1に対応し、9月中頃よりパブリック・ベータが公開され、第4四半期の前半に正式リリースが予定されているという。