メルマガ第8号を発行しました!

こんにちは! 
「AccSellメールマガジン」第8号が発行されました!

第8号の内容は

[連載] 中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
第8回: VDM100の基本機能
[連載] 植木 真の「JIS X 8341-3:2010 『逆引き』徹底解説」
第8回:JIS X 8341-3:2010 入門 <その8> 附属書
[レポート] 電子書籍プラットフォームのアクセシビリティの現状
Kindle (Amazon)/Nook (Barns And Noble)/iBooks (Apple)/Google Play Books (Google)などいろいろある電子書籍のレポート

の3本です!

今月は前回よりもちょっぴりスリムな気がしないでもないような。でも読み応えたっぷりです!

もちろん今号のチラ見せもありますよ!それは以下からどうぞ。

[連載]植木 真の「JIS X 8341-3:2010 『逆引き』徹底解説」
第8回:JIS X 8341-3:2010 入門 <その8> 附属書

早いもので、今回で第8回。そして、「JIS X 8341-3:2010 入門」も今回が最終回です。では、最終回もまずは JIS X 8341-3:2010 の目次から再確認してみましょう。

  • 序文
  • 1 適用範囲
  • 2 引用規格
  • 3 用語及び定義
  • 4 ウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級
  • 5 一般的原則
  • 6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件
  • 7 ウェブコンテンツに関する要件
  • 8 試験方法
  • 附属書A(参考)この規格を満たすウェブコンテンツ技術及びその実装方法の選び方
  • 附属書B(参考)WCAG 2.0 との整合性
  • 附属書C(参考)JIS X 8341-3:2004 とJIS X 8341-3:2010 との比較
  • 附属書D(参考)参考文献
  • 解説

さて、第8回は「その8:附属書」ということで、規格票の巻末にある「附属書A(参考)」から「解説」まで解説していきます。この巻末にある「附属書A~D」と「解説」は、どれも参考情報で、規格としての要件は含まれていません。では、順番に見ていきましょう。

■附属書A(参考)この規格を満たすウェブコンテンツ技術及びその実装方法の選び方

まずは、附属書Aです。ここでは「アクセシビリティ サポーテッド」という新しい用語に関する参考情報が提供されています。この附属書Aは、次の三つのセクションで構成されています。

  • A.1 この規格を満たすウェブコンテンツ技術及びその実装方法の選び方
  • A.2 日本における“ウェブコンテンツ技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法”
  • A.3 “アクセシビリティ サポーテッド情報”の作成方法

『JIS X 8341-3:2010』では、ウェブコンテンツが満たすべき達成基準を「7 ウェブコンテンツに関する要件」で規定しています。各達成基準を満たすことのできる具体的な実装方法については、規格票では一切言及されていません。ただ、その実装方法については、この連載でも紹介したように、「6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件」で次のように規定されています。

6.2 設計
b) 使用するウェブコンテンツ技術及び実装方法
ウェブコンテンツに使用する技術,及び各達成基準に適合するための実装方法を明確にしなければならない。箇条7 の達成基準を満たすためには,使用するウェブコンテンツ技術及び実装方法が実際に利用者にとって利用可能であることを確認しなければならない。例えば,仕様上は定められているがユーザエージェント(ウェブブラウザ,支援技術など)がサポートしていない方法で実装しても,達成基準を満たしているとはいえない。使用するウェブコンテンツ技術の実装方法が達成基準を満たすことができるかどうかを確認することは,設計・開発する者の責任である。

<引用元: JIS X 8341-3:2010「6.2 設計」より>

ここでいう「使用するウェブコンテンツ技術及び実装方法が実際に利用者にとって利用可能であること」というのが、「アクセシビリティ サポーテッド」であることの意味です。達成基準を満たすことができるのは、ユーザーが使用しているブラウザや支援技術によってサポートされている実装方法でなければならないということです。「アクセシビリティ サポーテッド」は、「ブラウザや支援技術によってサポートされていること」と言いかえることができるかもしれません。もとはW3Cの『WCAG 2.0』で用いられている "Accessibility-Supported Ways of Using Technologies" という用語からきています。

では、どのブラウザのどのバージョン、どの支援技術のどのバージョンでサポートされていれば、「アクセシビリティ サポーテッド」といえるのか。これについてはW3Cの『WCAG 2.0』でも言及されておらず、『WCAG 2.0 解説書』では、次のようにWCAGワーキンググループの見解が述べられています。

ワーキンググループは、何をもってサポートしているとするかを定義するに留め、どこまで、どれだけ多くの、あるいはどの支援技術がそのウェブ技術をサポートしていなければならないかという判断については、組織、調達、地域社会などにとっての要件を定める各々の状況により近いところにいる地域や団体に委ねることとした。

<引用元: JIS X 8341-3:2010「6.2 設計」より>

つまり、日本語環境において「どこまで、どれだけ多くの、あるいはどの支援技術がそのウェブ技術をサポートしていなければならないかという判断」は、日本で決めるしかないということです。しかし、ブラウザや支援技術によるサポート状況を確認するためには、まずテストファイルが必要です。テストファイルといっても、『WCAG 2.0 実装方法集』にはものすごい数の実装方法があります。テストファイルが用意できたとしても、サポート状況を確認するには、OS、ブラウザ、そして支援技術、どれをとっても複数の製品があり、さらにバージョンも複数あります。これらの考えられうる組み合わせだけでも、かなりのパターンが挙げられます。実際にこういった作業をやろうと考えると、とんでもない工数がかかってしまいます。

そこで、JIS X 8341-3:2010対応のために共有すべき基盤を整備するという目的で発足した、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)がこの一連の作業を行い、その成果を公開しています。ウェブアクセシビリティ基盤委員会のウェブサイトの「JIS X 8341-3:2010 関連文書」にある『アクセシビリティ・サポーテッド(AS)情報』がそれです。この『アクセシビリティ・サポーテッド(AS)情報』では、『WCAG 2.0 実装方法集』をもとにして作成されたテストファイル、主要なブラウザや支援技術による検証結果、さらに検証結果をふまえた「アクセシビリティ サポーテッド」かどうかの見解を提供しています。

この原稿を書いている時点では、テストファイルが作成されているのは、等級 Aおよび等級 AAの達成基準を満たすことのできる実装方法で、ウェブコンテンツ技術としては、HTML、CSS、そしてJavaScriptに関するものです。検証したOS、ブラウザ、支援技術については、15の組み合わせが用いられています。この作業を担当しているのは、筆者も参加しているウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の実装ワーキンググループ。同ワーキンググループでは、現在さらに新しいバージョンを用いた組み合わせによる検証を進めているほか、PDFのテストファイル作成にも着手しているところです。

検証結果をふまえた「アクセシビリティ サポーテッド」かどうかの見解については、同ワーキンググループでの議論を経て、実装方法ごとにその見解が公開されていますが、次の二点を前提としています。

  • 具体的なイメージとして、地方自治体のウェブサイトを想定する。つまり、できるかぎり多くの利用者の閲覧環境をカバーしたいサイトを前提とする。
  • 達成基準ごとに、アクセシビリティ・サポーテッド検証結果をふまえて、達成基準を満たすためにはその実装方法をどのように用いるべきかを解説する。

考慮すべきブラウザや支援技術の製品やバージョンは、ウェブコンテンツによって異なります。例えば、この前提にあるように、地方自治体のウェブサイトであれば可能なかぎり広範囲での組み合わせをカバーすべきですが、イントラネットのウェブコンテンツであればユーザーの利用環境を特定できる場合もあるでしょう。インターネットで公開されているウェブサイトの場合は、この『アクセシビリティ・サポーテッド(AS)情報』の見解がそのまま参考になるでしょうし、ユーザーの利用環境を特定できる場合は、あわせて公開されている検証結果でその組み合わせでのサポート状況を確認して独自に判断することもできます。

参考リンク

■附属書B(参考)WCAG 2.0 との整合性

『JIS X 8341-3:2010』は、『WCAG 2.0』との整合性を確保することを大前提にして作成されました。これまでにも触れてきた通り、「7 ウェブコンテンツに関する要件」にある達成基準は、『WCAG 2.0』の達成基準と全く同じです。そして、それ以外の箇条でも、『WCAG 2.0』で規定されていることがある場合には、それをもとにしています。この附属書Bは、特に『WCAG 2.0』との差異を明確にするために提供されている参考情報で、次のような構成になっています。

  • B.1 WCAG 2.0
  • B.2 WCAG 2.0 と同じである箇所
  • B.3 WCAG 2.0 と一部異なる箇所
  • B.4 WCAG 2.0 の関連文書

気になるのは「B.3 WCAG 2.0 と一部異なる箇所」だが、実際に目を通してみると大きく異なる箇所はなく、全体的に整合性が確保されていることが分かると思います。ただ、一点注意しておきたいのは、次の箇所です。

  • WCAG 2.0 の部分適合の宣言-第三者によるコンテンツ(Statement of Partial Conformance-Third Party Content)は,8.1.3 と同じ内容である。ただし,WCAG 2.0 では(部分適合であっても)適合ではないが,この規格では特定できる一部を除いた適合とみなしている。

<引用元: JIS X 8341-3:2010「B.3 WCAG 2.0 と一部異なる箇所」より>

『JIS X 8341-3』の「8.1.3 第三者によるコンテンツにおける例外」は、『WCAG 2.0』の「部分適合の宣言-第三者によるコンテンツ(Statement of Partial Conformance-Third Party Content)」に該当しますが、ウェブページにこの例外がある場合、そのウェブページは『WCAG 2.0』に「適合」していることにはならないのですが、『JIS X 8341-3』ではその例外箇所を除いて「適合」しているとみなすという点です。つまり、『JIS X 8341-3』に準拠していたとしても、この例外に該当する箇所がある場合には、『WCAG 2.0』では「部分適合」という扱いになり「適合」していることにはならないということです。

参考リンク

■附属書C(参考)JIS X 8341-3:2004 とJIS X 8341-3:2010 との比較

附属書Cは、タイトル通りで、『JIS X 8341-3:2004』と『JIS X 8341-3:2010』との比較表です。これは、

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