メルマガ第54号を発行しました!

こんにちは!2014年11月26日(水)にAccSellメール・マガジン第54号を発行しました!

[連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
第53回: 高まるWebアクセシビリティーへの注目
[連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
第12回: Webアクセシビリティのメリット

不定期連載だった「こんなブログ記事見つけました!」が、今号から正式レギュラーに!ひょー!

[連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
第12回: Webアクセシビリティのメリット

いよいよ今回から不定期連載ではなく、定番の連載としてレギュラー化することになりました。もうすでにそういう状態になっていましたが(苦笑)、今後も皆さんと共有したいブログ記事をご紹介していきたいと思います!

今回ご紹介するのは、WYSIWYG のテキストエディタ「CKEditor」の開発者であるSebastian Stefanov氏によるブログ記事です。タイトルは「Commercial Benefits of Accessibility」です。

「Commercial Benefits of Accessibility」というタイトル、日本語にすれば「アクセシビリティのビジネス的なメリット」といったところでしょうか。

Webアクセシビリティを単なる「高齢者・障害者対応」という狭義で捉えてしまうと、大手企業サイトで今までありがちだった「CSR(企業の社会的責任)」とか、そういうことだけで終わってしまいがちです。とはいえ、例えば説得力のある費用対効果を数値で表そうと思っても、なかなか難しいのも現実で、そこがジレンマだったりもします。

さて、このブログ記事では、どのような視点で「ビジネス的なメリット」を説明しているのでしょうか。このタイトルを見たとき、とても興味を持った次第です。

言い換えれば、アクセシビリティは大手の企業だけがそのメリットを享受できるものという言いかたもできる。
小規模や中規模の企業がアクセシビリティに取り組むのは、通常は政府の規制によりアクセシビリティ確保を強いられたときくらいである。しかし、企業がWebサイトや製品をアクセシブルにすべきであると言えるだけの経済的な利益が明らかにある。

Stefanov氏は、記事の冒頭でこのように述べてから、具体例を挙げながら幾つかのポイントを順に説明しています。

Untapped clients

まず「Untapped clients」という見出しがありますが、「潜在顧客」とでも訳せばよいでしょうか。まずは、障害者について、次のようなポイントを挙げています。

  • 障害者人口は、総人口の中で大きなウエイトを占めている。
  • WHOの「障害に関する世界報告書(World Report on Disability)」2011年版によれば、何らかの障害を持つ人は、世界の人口の約15.3%を占める。
  • イギリスの障害問題担当局の調査によれば、障害のある人は平均的なビジネスの顧客の20%に上る。
  • アメリカ合衆国商務省も同様な統計データを持っている。
  • WHOの統計データでは、視覚に障害のある人は世界の人口のほぼ4%だとしている。
  • アクセシビリティの恩恵を受けることのできるインターネットユーザーは2億8000万人に上る。

では、こういった数値がどうお金に結びつくのか? 答えは簡単で、アクセシブルなWebサイトは、スクリーンリーダーやその他の支援技術を用いてアクセスできるという単純な理由で、アクセシブルではない同業他社のWebサイトよりも障害のあるユーザーを引き寄せることになるとしています。

Webにアクセスできることは当たり前だと思うかもしれないが、障害のある人にとっては、Webのアクセシビリティが機会損失の一つの要因となりうる。多くのWebサイトはこの事実を無視しているが、障害のある利用者をロイヤリティの高い顧客にすることができる。

まずStefanov氏は、障害者人口の統計データを見ると、それはロイヤリティの高い潜在顧客としても無視できないだけの数であるとしています。

Not only for the disabled

次に、アクセシビリティは障害のある人のためだけではないとして、Webを使いこなしているシニア層について言及しています。ご承知のように、世界各国では高齢化が進んでいます。

2020年までに、65歳以上の人口は、日本では30%近く、ヨーロッパでは20%、アメリカでは16%まで達する見込みである。

日本は世界でも高齢化が最も進んでいる国です。2020年といえば、東京オリンピック&パラリンピックが開催される年ですよね。

これは無視できる数字ではない。シニア層は、ベビーブーム世代の人たち(1945年から60年代生まれの世代)を含んでおり、強い購買力とインターネット利用のノウハウを持った集団である。Webサイトのターゲットグループによっては、障害のあるユーザーはモバイルデバイスを利用しているユーザーよりはるかに多いかもしれない。

そして、シニア層の間では視覚の障害(衰え)は最も多い障害であり、アクセシビリティの恩恵を受けることができるとしています。

しかし、それだけではない。このリストにあるように、アクセシブルなWebサイトの恩恵を受けるユーザーは他にもいる。

  • モバイルデバイスの利用者
  • リテラシーの低い利用者
  • サイトで使用している言語が母国語ではない利用者
  • 遅いインターネット接続回線を利用している人
  • 古いテクノロジーを利用している人
  • 騒がしい環境にいる利用者
  • 屋外で利用している人

また、例えば建設現場で働いているエンジニアは、ハイコントラストモードやキーボードナビゲーションのあるアプリケーションを好むかもしれない、とも述べています。このあたりは、前回ご紹介した「やはりお前らのWebアクセシビリティは間違っている(PDFファイル)」でも語られていましたよね。様々なユーザー、多様化するデバイス、そしていろいろなコンテキストの掛け合わせで無数にある利用環境において、利用できる度合いを高める必要がある、という話に通じるところですよね。

Future-proof

さらにStefanov氏は、世界中の国々がアクセシビリティを改善するように法律を改めているところで、アクセシブルなWebサイトや製品に今投資しておくことで、将来のリスクを回避できるとしています。

その最たる例として、イギリスの「2010年平等法(Equality Act 2010)」を挙げ、その「行為準則(Code of Practice)の「11.8 Website services」を紹介しています。この法律は、アクセシビリティの基準を満たしていない企業や団体を訴えることができる権利をイギリス国民に与えているとのことです。

そして、イギリスで2番目に大きな航空会社であるBMI(ブリティッシュ・ミッドランド航空)アメリカ最大の税務サービス会社H&R Block社カナダ政府に対する訴訟事例を挙げています。

航空会社といえば、アメリカのサウスウエスト航空や韓国の大韓航空のWebサイトも、訴訟の対象になったことが過去にあります。米国の航空アクセス法(Air Carrier Access Act)では、米国に乗り入れる路線のある米国内外の航空会社を対象に、Webサイトのアクセシビリティ確保を義務付け始めました。企業のWebサイトの中では、航空会社サイトのアクセシビリティが話題になることが多いですね。

Stefanov氏は、将来に向けた対応という意味で、モバイルデバイスのサポートも挙げています。アクセシブルなWebサイトをデザインすることは、飛躍的に需要が伸びているモバイルデバイスでのアクセスに対応することにも通じるとしています。

つづきはメルマガで……。

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