メルマガ第5号を発行しました!

こんにちは! 
「AccSellメールマガジン」第5号が発行されました!

第5号の内容は

[連載] 中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
第5回:点字ワープロ
[連載] 植木 真の「JIS X 8341-3:2010 『逆引き』徹底解説」
第5回:JIS X 8341-3:2010 入門 <その5> 制作・開発から保守・運用まで
[連載] 辻 勝利の「Life with 支援技術」
第4回:多言語対応スクリーン・リーダーNVDA

の3本です!

また文字数の記録更新をしています(汗)
さー!今号もチラ見せをしちゃいます!

[連載]植木 真の「JIS X 8341-3:2010 『逆引き』徹底解説」
第5回:JIS X 8341-3:2010 入門 <その5> 制作・開発から保守・運用まで

第5回の今回も、まずは JIS X 8341-3:2010 の目次から再確認してみましょう。

  • 序文
  • 1 適用範囲
  • 2 引用規格
  • 3 用語及び定義
  • 4 ウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級
  • 5 一般的原則
  • 6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件
  • 7 ウェブコンテンツに関する要件
  • 8 試験方法
  • 附属書A(参考)この規格を満たすウェブコンテンツ技術及びその実装方法の選び方
  • 附属書B(参考)WCAG 2.0 との整合性
  • 附属書C(参考)JIS X 8341-3:2004 とJIS X 8341-3:2010 との比較
  • 附属書D(参考)参考文献
  • 解説

さて、第5回は「その5:制作・開発から保守・運用まで」ということで、前回からの続きで「6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件」を解説していきます。

■6.3 制作・開発

6.3 制作・開発
ウェブページ一式の責任者は,箇条7 の対応する達成基準を満たすように,ウェブコンテンツを制作・開発しなければならない。

<引用元: JIS X 8341-3:2010「6.3 制作・開発」より>

この「6.3 制作・開発」で押さえておきたいポイントは、「注記」として書かれている次の二つです。

  • 達成基準を満たすために用いる実装方法は,W3C が公開している『Understanding WCAG 2.0』のSufficient and Advisory Techniques(詳細は、『Techniques for WCAG 2.0』)を参照するとよい
  • 独自の実装方法を用いてもよいが、ユーザーが使用するブラウザや支援技術を用いて、ユーザーが問題なく利用できることを確認する必要がある

■達成基準を満たすために用いる実装方法

箇条7 の達成基準は、W3Cの『WCAG 2.0』の達成基準をそのまま採用しています。その『WCAG 2.0』には、各達成基準を解説する『Understanding WCAG 2.0』があり、さらに達成基準を満たすことのできる各実装方法を解説する『Techniques for WCAG 2.0』があります。こうした関連文書とセットにして初めて『WCAG 2.0』に対応するために必要な情報が揃うことになります。『JIS X 8341-3:2010』は、『WCAG 2.0』と全く同じ達成基準を採用していますから、これらの『WCAG 2.0』関連文書がそのまま『JIS X 8341-3:2010』の達成基準の解説書になり、実装方法集となります。

『WCAG 2.0』の関連文書がこれだけ充実しているのには理由があって、『WCAG 2.0』の達成基準はあらゆるウェブコンテンツ技術に適用できるように書かれているため、読んでも理解しづらい表現で書かれていたりします。特定のウェブコンテンツ技術を想定すればもっと理解しやすくなるのですが、そうするとあらゆるウェブコンテンツ技術に適用できなくなりかねません。

また、ウェブコンテンツ技術の進化スピードは、皆さんもご存知のようにとても早いです。その進化に合わせて改訂しようとしても、『WCAG 2.0』はW3C勧告であるため、一部を改訂するだけでもかなりの時間を要してしまいます。そこで、ウェブコンテンツ技術ごとの具体的な技術情報などは、改訂が容易にできるW3C ワーキンググループ・ノートとして別に提供されることになったのです。

W3Cが公開している『Understanding WCAG 2.0』と『Techniques for WCAG 2.0』は、もちろん原文は英語で書かれていますが、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)がその日本語訳を公開しています。これらの『WCAG 2.0』関連文書も十分に理解しやすいかというと、個人的にはまだまだ改善の余地があるように思いますが、まだご覧になったことがない方には一度目を通してみることをお奨めします。少なくとも、達成基準の文言だけを読むよりは、正しい理解が深められると思います。

参考リンク

■独自の実装方法

W3Cの『Understanding WCAG 2.0』と『Techniques for WCAG 2.0』には、W3Cが仕様を策定しているHTMLやCSSはもちろん、FlashやPDF、Silverlightなどの実装方法も各技術ベンダーが提供しています。しかし、これはWCAGワーキンググループも認めていることなのですが、考えられる実装方法の多くはカバーできているものの、全てを網羅することは不可能です。そのため、WCAGワーキンググループでは、他にも実装方法があれば、ぜひ追加すべき実装方法として提案してほしいと呼びかけています。

『JIS X 8341-3:2010』に対応する際にも同じことが言えて、「6.3 制作・開発」の「注記」では、達成基準を満たすために独自の実装方法を用いてもよいとしています。ただし、条件が一つあります。前回、「6.2 設計」の「b) 使用するウェブコンテンツ技術及び実装方法」で説明したように、ブラウザや支援技術によりサポートされていることが条件です。つまり、その実装方法を用いたコンテンツをユーザーが使用するブラウザや支援技術を用いて検証し、ユーザーが問題なく利用できることを確認する必要があります。

参考リンク

■6.4 検証

6.4 検証
ウェブページ一式の責任者は,ウェブコンテンツを制作・開発した後,対応する達成等級の達成基準が満たされていることを検証しなければならない。

<引用元: JIS X 8341-3:2010「6.4 検証」より>

この「6.4 検証」は、意外とあっさりと書かれています。ここでは、前述の『Understanding WCAG 2.0』と『Techniques for WCAG 2.0』、つまりウェブアクセシビリティ基盤委員会が公開している日本語訳のタイトルで言えば『WCAG 2.0 解説書』と『WCAG 2.0 実装方法集』で挙げられている実装方法を用いる場合の検証方法を紹介しておこうと思います。

『WCAG 2.0 実装方法集』の各ドキュメントには、最後に「検証」というセクションがあります。そこに「チェックポイント」と「判定基準」が書かれていて、判定基準をクリアしていれば、その実装方法が正しく用いられていることになります。そして、その実装方法がある達成基準を満たすことのできる実装方法の一つである場合、その達成基準を満たしているといえます。

ただし、あくまでも達成基準の要件を満たしているかどうかが重要なので、各達成基準の意図を確認しながら検証しなければなりません。また、その「チェックポイント」や「判定基準」を満たしていなかった場合、その実装方法が正しく用いられていないことになりますが、別の実装方法によってその達成基準が満たされていることもありえます。この二点には注意してください。

検証する目的が、「8. 試験方法」に沿った試験結果の表示を行うためという場合も当然あると思います。「8. 試験方法」については、次号で解説させていただきますので、そちらもあわせてお読みいただけたらと思います。

■6.5 保守・運用

「6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件」の一番最後は、「6.5 保守・運用」です。『JIS X 8341-3:2010』に対応する際、忘れられがちな要件なのですが、次の三つが挙げられています。

つづきはメルマガで……。

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