メルマガ第121号を発行しました!

こんにちは!2017年9月13日(水)にAccSellメール・マガジン第121号を発行しました!

[連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
第104回: 視覚障害者と読書 (4)
[寄稿]発売前に徹底解説!インクルーシブHTML+CSS&JavaScript 多様なユーザーニーズに応えるフロントエンドデザインパターン
伊原力也

[連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
第104回: 視覚障害者と読書 (4)

先週配信したポッドキャストでも触れましたが、今月からAccSellは6年目に突入しました。丸5年もこんな駄文を書き続けていることに我ながら驚くと同時に、辛抱強くお付き合いいただいている読者の皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいです。引き続きこの調子で続けていきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。

さて、連載第101回 (第113号掲載)から前回まで、アナログ時代の点字図書や録音図書、そしてそのデジタル化について紹介しました。前回の最後にも少し触れましたが、僕が点字図書や録音図書を使ってきたこの40年くらいの間に、これらの図書の質が随分向上したという印象を持っています。今回はこの点についてお話しします。

点字図書、録音図書の質って?

点字図書や録音図書の「質」の善し悪しを考える上で、まずそもそも何を持って「質が高い図書」といえるのかということをはっきりとさせておく必要がありそうです。おそらくいろいろな人がいろいろな意見を持っていることだと思いますが、ここでは僕自身が特に重視している点を挙げておきます。

点字図書の質

まず点字図書の質を考える上で最も重要なのは、「正しい点字で書かれている」ということです。これまでも何度か触れたことがありますが、日本語の点字はすべてを仮名だけで表記します。仮名だけで書かれていても意味が通じるように、文節分かち書きと呼ばれる方法を採用しています。

文節分かち書きとは、文節と文節の間に空白を入れて、いわば単語の切れ目がどこなのかを明確にする方法です。この分かち書きですが、文法的なことや音節数に基づいて細かくその方法が決められています。

分かち書きの方法に加えて、一般的な仮名や英数字以外の記号の表記について定めているのが、日本点字委員会が制定している「日本点字表記法」というものなのですが、まず第一にこの日本点字表記法を順守した表記になっていることが非常に重要だと感じます。

現在使われている日本点字表記法は2001年に制定されたものです。僕が頻繁に点字の読み書きをしていたのは1990年代の中頃までで、その後は特に書くことが少なくなってしまい、また人が読む前提で点字文書の校正作業をすることもほとんどなくなってしまいましたので、現行の表記法についてはそれほど詳しいわけではありませんし、また読みやすさを考えられて決められている分かち書きの規則の中には、必ずしも僕が同意できないようなものもあるようなのですが、ともあれすべての点字文書が一定の規則に従って正しく表記されていることは非常に重要だと思います。

また、当然のことですが、元々漢字仮名交じり文で書かれているものを点字にする場合、正しく読み下した仮名で表記するということも、絶対的に必要なことです。

紙の本で点字を読んでいる場合は、これに加えて例えば改ページの入れ方を工夫することなどで多少検索性を上げることができたりするといったこともあると思います。

こういったことが、点字図書の「読みやすさ」につながる点字図書の「質」を左右する要素だと思います。

録音図書の質

点字図書の質が「読みやすさ」であるなら、録音図書の質は「聴きやすさ」ということになるでしょう。

点字図書と同様、正しく読み下すということはまず何よりも重要だと思います。その際、正しいアクセントで読まなければ同音異義語が読者に間違って伝わってしまうということもありますし、聴いていて違和感があれば読書に集中することもできなくなってしまいます。ですから、音訳に当たっては点訳の場合よりもかなりしっかりとした下調べが必要になるものと思います。(実際、音訳者はアクセント辞典などを参考にしたりして、入念に準備する場合が特に最近では多いようです。)

そして、読み方についても「質」に大きく影響すると感じます。

カセットテープの時代、ちょっと古めの小説を借りて聴いてみると、ものすごく感情豊かに、登場人物によって少し話し方を変えたりして読む音訳者に出会うことがしばしばありました。その一方で、あまり声に表情を付けずに淡々と読む音訳者もいました。

当時僕はどちらが良いのかといったことはほとんど意識していませんでしたが、今考えてみると、感情豊かに読むということは作者の意図を音訳者が勝手にくみ取って、音訳者の解釈を伝えているということになり、読者はその解釈に引っ張られる形で読書することになってしまうと思うので、本当は淡々と読むのが有るべき姿のような気がしています。最近は小説を読むことがめっきり減ってしまったので正確なところは分かりませんが、以前よりもこういう感情豊かな録音図書に遭遇することは少なくなったように感じています。

無論エンターテインメント性が高い「オーディオ・ブック」として製作されている録音図書に関しては、例えば声優さんが登場人物になりきって読む、というようなやり方をした方が良かったりするとは思いますが、それは「音訳」とか「録音図書」とかいったものとは違うもののように感じています。

それから、録音図書の場合は、今読み上げられたのが見出しなのかとか、ここに段落の切れ目があるとか、そういったこともある程度は読者が推測できるように、読み方のリズムを工夫したりといったことも、聴きやすさにつながる重要な要素だと思います。(点字図書の場合こういった情報は、改行や字下げなどを使って表現するある程度一般化した方法が決まっていますので、録音図書に比べるとこの点の難しさは少ないように思います。)

読みやすさ、聴きやすさに加えて

つづきはメルマガで……。

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