こんにちは!2016年4月13日(水)にAccSellメール・マガジン第87号を発行しました!
- [連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
- 第84回: 視覚障害者とプレゼンテーション (5)
- [連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
- 第43回: JIS X8341-3:2016 - Web Usability Info
- [連載]山本和泉の「解説放送レビュー:観たり聞いたり歌ったり」
- 第6番組目: 日本テレビ『それいけ!アンパンマン』2016年4月8日放送分から
[連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
第43回: JIS X8341-3:2016 - Web Usability Info3月22日に「JIS X 8341-3:2016」公示
年度末の慌ただしい時期に「JIS X 8341-3:2016」が公示されました。「JIS X 8341-3:2010」の公示が2010年8月だったので、JIS X 8341-3としては約5年半ぶりの改定ということになります。
3月22日、ワタクシはアクセシビリティの国際カンファレンス「CSUN 2016」に参加するため、アメリカのサンディエゴにいました。時差があるため、現地時間では1日前の3月21日に公示されたことを確認しました。
先週公開されたAccSellのポッドキャスト第90回: 「おじさんはほんとに疲れましたよ」でも少しお話していますが、この「JIS X 8341-3:2016」はウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)が原案を作成しました。中根さんとワタクシも参加して、2014年度の1年間プラス2015年度もこの作業に追われておりました。
そこで、今回はこの「JIS X 8341-3:2016」の概要を皆さんとシェアすべく、ポッドキャストでもご紹介した次の記事を紹介したいと思います。
今回の改定のポイントを分かりやすくまとめられています。では、この記事をベースにして、原案作成メンバーの立場から解説していきますよ~
ISO/IEC 40500:2012 ≡ WCAG 2.0 = JIS X8341-3:2016
「JIS X8341-3:2010」の改訂として、2016年3月22日に「JIS X 8341-3:2016」 が公示されました。達成基準の内容 (つまり JIS X8341-3 準拠のために必要な施策) については変更がありませんが、文書構造的に WCAG 2.0 との合致が図られています。折しも、2012年10月に WCAG 2.0 は正式に ISO/IEC 国際規格として承認されたので (ISO/IEC 40500:2012)、今回の JIS X8341-3:2016 の公示によって、以下のような関係になったといえます。ISO/IEC 40500:2012 ≡ WCAG 2.0 = JIS X8341-3:2016
まず、今回の改定の大きなポイントは、この一点につきると思います。
JISは日本の国内標準規格、ISO/IECは国際標準規格なのですが、規格の世界においては、基本的にJISはISO/IECと一致した内容とすべしという方向性があります。
「JIS X 8341-3:2010」を作成したときには、ISO/IECにはWebアクセシビリティの規格がありませんでした。しかし、2012年10月にW3C勧告の「WCAG 2.0」がそのまま「ISO/IEC 40500:2012」として国際規格になりました。そのため、JIS X 8341-3はよほどの理由がないかぎり、基本的には対応国際規格となった「ISO/IEC 40500:2012」と同じ内容にする必要がありました。
それは、つまりJIS X 8341-3を「WCAG 2.0」にするということになります。「JIS X 8341-3:2010」で既に「WCAG 2.0」と同じ達成基準を採用していましたが、「JIS X 8341-3:2010」にはJIS独自に追加した要求事項もありました。具体的には、企画・設計から運用に至るプロセスに関する要件や試験方法に関する要件です。どちらも「WCAG 2.0」の関連する要件をベースとしつつ、JIS独自の要求事項も付加されていました。
そのため、対応国際規格となった「ISO/IEC 40500:2012」(=「WCAG 2.0」)と同じ内容にするという判断を下すにあたっては、そのJIS独自の要求事項をどうするかという議論が最初にありました。
結果的には、原則通りに「ISO/IEC 40500:2012」(=「WCAG 2.0」)と同じ内容にするという結論に至ったのですが、「JIS X 8341-3:2010」にあったJIS独自の要求事項については、次のように「附属書(参考)」として「JIS X 8341-3:2016」にも残すことにしました。
- 附属書JA(参考)ウェブアクセシビリティの確保・維持・向上のプロセスに関する推奨事項
- 附属書JB(参考)試験方法
いずれも内容を一部見直したり、いくつかの事項を補足するなどしています。ただ、基本的には既に取り組んでいた「JIS X 8341-3:2010」への対応が無駄になることはなく、またこれから新たに対応を始めるという場合にも参考にしてもらえるようになっています。「JIS X 8341-3:2010」との大きな違いは、厳密にはこれらは要求事項ではなく、推奨事項という位置付けになったという点です。
「原則」「ガイドライン」「達成基準」の採番
旧来の2010年版では、「原則」「ガイドライン」「達成基準」は、目次構造上、第7章 (箇条7) の中に格納されていました。このため、同内容の達成基準であっても WCAG 2.0 では「1.1」、JIS X 8341-3 では「7.1.1」と異なる採番になってしまい、WCAG 関連文書 (「Understanding WCAG 2.0」や「Techniques for WCAG 2.0」など) と併せ読むうえで若干不便でした。
「JIS X 8341-3:2010」では、「WCAG 2.0」の4つの「原則」、12の「ガイドライン」、そして61の「達成基準」をそのまま「7. ウェブコンテンツに関する要件」にしていました。そのため、「Understanding WCAG 2.0」や「Techniques for WCAG 2.0」の日本語訳がそのまま「JIS X 8341-3:2010」の関連文書として活用できたわけですが、JISでは項番の頭にそれぞれ「7」が付いていました。
「JIS X 8341-3:2016」では、この項番も同じにしたので、より参照しやすくなったかと思います。例えば、グローバル企業などで多言語で運用しているWebサイトがある場合も、同じ項番で同じ達成基準を参照できるようになりました。
具体的な施策への誘導
これに対処すべく今回の改訂 (JIS X8341-3:2016) では、各達成基準に注記として、関連文書 (「How to Meet WCAG 2.0」や「Understanding WCAG 2.0」) の該当セクションの URL が追記されました。これにより、具体的な施策の参照がしやすくなっています。
これについては、実は参照しにくい面もあります。まず、この関連文書のURLは、W3Cが公開している「How to Meet WCAG 2.0」や「Understanding WCAG 2.0」の原文のURLになっています。つまり、英語なんですね...。
「Understanding WCAG 2.0」については、その日本語訳がウェブアクセシビリティ基盤委員会のWebサイトで公開されているのですが、常に最新の内容にキャッチアップできているとは限らず、またその日本語訳も厳密にはW3Cが認めた公式なものでもないため、原文のURLとせざるをえませんでした。
また、「JIS X 8341-3:2016」の規格票を紙の冊子で入手した場合は、当然ながらリンクとして機能しないため参照しづらいですし、規格票にはPDFファイル版もあるのですがリンク先は英語の原文でして...。
「Understanding WCAG 2.0」は、最近は半年~1年に1回のペースで更新されていますので、日本語訳も最新版にキャッチアップすべく、ウェブアクセシビリティ基盤委員会で準備を進めているところです。また、「How to Meet WCAG 2.0」もできれば日本語でも利用できるようにしたいと考えています。
つづきはメルマガで……。