こんにちは!2015年9月9日(水)にAccSellメール・マガジン第73号を発行しました!
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- 第31回: Screen Reader User Survey #6 Results
[連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
第31回: Screen Reader User Survey #6 Results第6回目を迎えたスクリーンリーダー利用者の調査
さて、今回はブログ記事ではないのですが、アメリカのWebAIMが実施している「Screen Reader User Survey」の最新の調査結果が公開されていますので、その内容を一緒に見ていこうと思います。
Introduction
第6回目となった今回の調査は、今年の7月に実施され、有効回答数が2,515件で過去最多となったようです。この調査は、2009年1月に初めて行われ、その後だいたい一年おきくらいの頻度で継続して行われているものです。
調査結果を見る際の注意点として、次の四点を挙げています。
- 複数回答もあるため、合計しても100%にならないものがある。
- 設問によっては全員が回答していないものもある。
- 任意の調査なので、回答者全体が全てのスクリーンリーダー利用者を代表しているわけではない。
- 今後も継続して調査していくので、意見、要望等があればいつでも受け付けている。
それでは、まず回答者のプロフィール情報から順に見ていきましょう。
Demographics
まず、回答者の居住地ですが、北米が圧倒的に多くて69.4%。続いて、ヨーロッパ/イギリスが17.4%、オーストラリア・オセアニアが5.4%、アジアが4.3%と続いています。英語での調査ということもあり、これまでと同様、欧米や英語圏からの回答が多かったようですね。
また、回答者のうち、93.1%が障害を理由にスクリーンリーダーを使用しているとのこと。逆に言うと、約7%の回答者は例えばWeb制作や開発の仕事など別の理由で使用しているということになります。
次に、障害の種別ですが、全盲が64%、ロービジョンなどの視覚障害が38.7%と、やはり圧倒的に視覚に障害のある人が大半を占めています。
気になったのは、聴覚に障害がある人も6.2%いることです。これは、全体の16.1%が複数の障害があるとしていて、4.1%が視覚と聴覚の両方に障害があるということで、おそらくスクリーンリーダーを利用して、点字ディスプレイを使用している人たちが含まれているのだと思います。
習熟度については、ちょうど半分の50%が上級者、42%が中級者、そして初心者と回答した人は8%でした。そういう意味では、この調査結果は中・上級者がメインという感じでしょうか。
そして、インターネット利用の習熟度については、60%が上級者、37%が中級者、初心者はわずか3%でした。
以上のことを念頭に置いて、この調査結果を見ていくとよいでしょう。
Primary Screen Reader
最もよく使うスクリーンリーダーは、欧米や英語圏が中心だけあって、JAWSが30.2%、ZoomTextが22.2%、Window-Eyesが20.7%、NVDAが14.6%、VoiceOverが7.6%という数字です。日本だと、おそらくPC-Talkerが圧倒的に多い結果になることでしょう。
この中で注目されるのは、ZoomTextが前回の1.3%から22.2%、そしてWindow-Eyesが前回の6.7%から20.7%と、大幅に利用率がアップしていることです。
Window-Eyesについては、マイクロソフトのOfficeユーザーに無償提供されることになったのが大きな要因ではないかとしています。
そして、ZoomTextについては、ベンダーがかなり積極的に今回の調査をユーザーに告知したことで、ZoomTextユーザーの回答数が増えたと推測されています。
ZoomTextは、ロービジョンの人が使う画面拡大機能に加えて、スクリーンリーダーとしての機能も備えているのですが、この調査ではZoomTextユーザーのうち、92.3%がロービジョン、全盲の人は13.4%のみだったようです。
ちなみに、全盲の人だけで見ると、JAWSが38.9%、Window-Eyesが26.5%、NVDAが16.9%、VoiceOverが8.7%となっていて、JAWSは2009年からの減少傾向が加速し、Window-Eyesが前述の要因もあって増加傾向が顕著に見てとれる感じですね。
Browsers
ブラウザのトップシェアはIE 10で34.9%、続いてFirefoxが30.1%、IE 6,7,8が合計で12.8%、Safariが7.9%、Chromeが6.3%、IE 9が5.8%。
一般的なブラウザのシェアと比較すると、IEの多さがやはり目を引きます。WAI-ARIAをサポートしていないIE 8以下も12.8%ですが、それでもIEは回を重ねるごとに減少傾向にあります。逆に、ChromeやFirefoxが増加傾向にあるようですね。
Screen Reader / Browser Combinations
スクリーンリーダーの中には、複数のブラウザに対応しているものもあり、中には同じ製品の同じバージョンでもブラウザによっては機能に差があるといったこともあります。そこで気になるのが、ブラウザとの組み合わせなのですが、IEのバージョンを無視すると次のような結果です。
- JAWS with IE - 23.9%
- Window-Eyes with IE - 14.9%
- NVDA with Firefox - 11.4%
- ZoomText with IE - 9.8%
- ZoomText with Firefox - 6.9%
- VoiceOver with Safari - 6.8%
個人的には、NVDAとFirefoxの組み合わせが何となくいい感じで好きなのですが、意外とIEの利用率が高いようですね。
Screen Readers Commonly Used
次は、複数回答で普段使うスクリーンリーダーを挙げてもらった結果です。
トップはここでもJAWSで43.7%ですが、NVDAが41.4%と肩を並べてきています。JAWSの利用率はここでも大きく減少していますね。ここでも、29.6%のWindow-Eyes、27.5%のZoomTextの大幅な増加が特徴的です。
Operating System
OSは、Windowsが85.3%で圧倒的。iOSは5.3%、Androidは1.3%ですが、どちらもわずかに増加していて、iOS利用者の7割近くはiPhoneを使用しているようです。
Screen Reader Updates
過去一年間にスクリーンリーダーをアップデートしたか?という設問。82.1%がYes、17.9%がNoという結果です。特に、NVDA、VoiceOver、Window-Eyesは、アップデートは無償ということもあり、90%以上のユーザーがYesと回答していて、それと比較するとJAWSは80.1%とやや低めのようです。
同じ調査を日本でやったら、どういう結果になるのか興味があります。何となく、あまりアップデートしないという印象があるのですが...。NVDAやVoiceOverなら無償なので、やはり高い数字になるんでしょうかね。
Mobile Screen Readers
次は、モバイル端末に限定した調査結果です。
モバイル端末のスクリーンリーダー利用率は、69.2%とやや低めです。前回までは増加傾向が続いていて80%を超えていたのですが、今回の数字は、前回までとやや回答者層に違いがあることも影響しているのかもしれません。
このあたり、今回はZoomTextを利用しているロービジョンのユーザー層が増えているので、前回までとはなかなか比較しにくい感もあります。ただ、全盲の人のうち、80.2%はモバイル端末を使用しているようですね。
OSは、iOSが69.6%、Androidが20.8%で、どちらも増加傾向です。よく使うスクリーンリーダーは、VoiceOverが56.7%、AndroidのTalkBackが17.8%ということで、iOS系の利用率が3倍強といった感じです。これも日本だとどういう数字になるのか気になるところです。
Web Accessibility Progress
さあ、ここ一年くらいのWebアクセシビリティについて、どう感じているかを三段階で評価してもらったところ、38.7%がよりアクセシブルになった、ほぼ同等の37.7%が変化なし、そして23.6%がアクセシビリティが低下している、と感じているようです。
Reasons for Inaccessibility
そして、気になるのがこの設問。多くのデベロッパーがアクセシブルなWebサイトを作らない一番の理由は何だと思いますか?というもの。
「Webアクセシビリティが知られていない」が43.0%でトップ、次が「スキルや知識の不足」で26.6%、「見た目や機能を損なうのではという懸念」が20.3%、「予算やリソースの不足」が10.1%ということで、「知られていない」を挙げる人が若干増えているようです。実際にどうなのかはまた別だと思いますが、まだまだ知られていないという感が強いようです。
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