こんにちは!2015年5月13日(水)にAccSellメール・マガジン第65号を発行しました!
- [連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
- 第64回: HTML 4.0とWebアクセシビリティー
- [連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
- 第23回: 第5回 D2D アクセシビリティ勉強会でアクセシブルなデザインを作成!
[連載]中根雅文の「全盲のコンピュータ利用に関する四方山話」
第64回: HTML 4.0とWebアクセシビリティー前回は、フレームやテーブルが視覚障碍者のWebアクセスに及ぼす影響について紹介しました。フレームやテーブルが多用されていたのは、1990年代後半から2000年代前半にかけてですが、1990年代後半というのは、以前にも紹介したWorld Wide Web Consortium (W3C) のWeb Accessibility Initiative (WAI)が発足 (1997年4月) した直後のタイミングで、ようやく「アクセシビリティー」という言葉が当事者や一部の研究者以外にも認知され始めたような時期だったといえるでしょう。今回は、ちょうどこの時期に策定が進められていたHTML 4.0に追加された、Webのアクセシビリティーを向上させるための仕組みのいくつかについて紹介します。
1990年代半ばのHTML
今回取り上げるHTML 4.0が正式なW3C Recommendation (勧告) になったのは、1997年の12月のことでした。それより前には、1993年に発表されたHTMLの仕様 (一般に「HTML 1.0」と呼ばれることが多いものです) 、1995年に発表されたHTML 2.0、1997年1月に発表されたHTML 3.2などがありました。
HTMLの仕様策定をW3Cが行うようになったのは、HTML 3.2以降で、それより前のHTMLについては、IETF (Internet Engineering Task Force) で検討、策定されていました。IETF時代のHTMLの仕様は、まずはWebの考案者であるTim Berners-Leeが示したものを仕様書としてまとめるところから始まったようです。その上で、時々発行されるID (Internet Draft) と呼ばれる文書によって徐々に機能が拡張されていきました。HTML中で日本語を含む多言語のテキストを扱えるようにする拡張も、この時期の終盤に加えられました。 (それまでも事実上ほぼ問題なく日本語を扱うことはできていましたが、仕様上は扱えないことになっていたのです。)
IETFは、HTML 3.0の仕様書の策定作業も進めていましたが、これは結局W3Cに引き継がれ、HTML 3.0が仕様として完成することはありませんでした。
W3Cは、HTML 2.0に加え、その後に発行されたIDを取り込む形で、HTML 3.2を策定し、1997年1月にHTML 3.2として発表しました。
HTML 4.0
HTML 3.2がW3C勧告として発表された後、W3CではHTML 4.0の策定作業が進められていました。HTML 4.0の目玉とも言える特徴として、当時からアクセシビリティーと国際化 (多言語対応) が挙げられることが多いのですが、ちょうどこの頃、WAIが発足しました。
WAIというと、Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) の策定が代表的な成果で、またそれが主な取り組みだと思う人も多そうですが、WCAGやその他のガイドラインの策定に加えて、W3Cの中で策定が進められている技術仕様に関して、アクセシビリティーの観点から改善のための提案をするという取り組みも行っています。この取り組みで最初に対象になった仕様が、HTML 4.0でした。
僕自身も、このHTML 4.0のアクセシビリティー機能に関する議論には参加しました。既に18年も前の話ですから詳細は覚えていませんが、主にimg要素のlongdesc属性や、テーブルのアクセシビリティーに関する話が中心だったように記憶しています。以下、これを読んでくださっている方にはわかりきったことかも知れませんが、簡単に説明します。
画像のアクセシビリティー
Webページ上に画像が掲載される場合のアクセシビリティーの問題としては、主に2つの点が挙げられます。画像の代わりに表示するテキスト (いわゆるaltテキスト) がない画像や不適切なaltテキストが付加された画像が多かったこと、そしてaltテキストでは表現しきれないような詳細な説明を提供する手段が確立されていなかったことです。
altテキストが指定されていない画像の問題点は、いうまでもなくスクリーン・リーダーのユーザーなどに、その画像が伝えようとしている情報が伝わらないという点です。また、不適切なaltテキストが指定されている画像は、こういったユーザーの理解を阻害することにつながります。
この問題、特にaltテキストが指定されていない場合への対策として、それまでは指定してもしなくても良かったimg要素のalt属性が、必ず指定しなければならないことになりました。こうすることで、文法的に正しいHTMLを記述したければ、必ずalt属性を書かなければならなくなりましたから、altテキストがない画像を減らすことが期待されました。 (そして一定の効果はあったように感じています。)
ただ、こうすることで例えばレイアウトの調整のために透明の画像を使うような場合に、そういった意味のない画像にもaltテキストが指定されてしまって、結果として不適切なaltテキストが付加された画像が増えてしまうようなことも懸念されました。その対策として、意味のない画像には空のalt属性 (
alt=""
) を指定するべきであることが、仕様書に明示されました。一方、画像のより詳細な情報の提供ですが、それまではD-Linkと呼ばれる手法を提唱する人がそれなりにいました。これは、サイズが小さい (1ピクセルとか) 画像に "D" というaltテキストを付けたものを、詳細な説明を付加したい画像の隣に配置し、これを詳細説明が掲載されているページへのリンクにするという方法でした。ただ、これはもちろんHTMLの仕様で定められた方法ではありませんでしたから、一部の人が実践していたにすぎない方法です。
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