こんにちは!2014年8月13日(水)にAccSellメール・マガジン第47号を発行しました!
- [連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
- 第46回:自宅にUnixシステムを導入
- [不定期連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
- 第5回:「入口まで」と「出口まで」
- [不定期連載]山本和泉の「izuizuのアクセシビリティ100本ノック」
- 第5本目:コーチ&監督指導<
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[不定期連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
第5回: 「入口まで」と「出口まで」8月も中旬となり、世間はお盆休みモードに入ってきました。皆さんはお盆休み中でしょうか? それとも、お盆など関係なく、普段通りにお仕事をされているのでしょうか?
今回は、そんなお盆休みの時期に改めて考えてみるのもいいなと思った記事を不定期連載の第5回目として取り上げてみようと思います。
このページの日付を見ると2013年10月20日となっているので、一年近く前のエントリーのようですが、今日仕事の合間にFacebookのタイムラインを眺めていたら、何人かの方がシェアしていたので目に留まりました。
というわけで、ちゃちゃきさんのブログ「void chachaki::Blog::main()」の『「入口まで」と「出口まで」のデザイン』という記事をご紹介させていただきます。ちゃちゃきさんは、プロフィールによると「人間中心デザインにとても興味のあるエンジニア。エクスペリエンスアーキテクト。」でいらっしゃるとのこと。この記事を書いたきっかけを次のように述べています。
ある製品・サービスをデザインする、と考えたときに多くの場合はユーザーにとってのゴール(目標)を仮定し、そこに導くためのデザインを考えている。しかし、そこには「入口まで」と「出口まで」の大きく2種の考え方がある、と最近考えるようになった。それを考えるキッカケは、3月頃にアクセシビリティに携わる方々とお会いする機会があり、その方々の考えの一旦に触れて、自分との考え方の違いを知ったからだった。
「人間中心デザイン(HCD)」のエンジニアさんが「アクセシビリティ」に携わる人たちと接したことによって生じたモヤモヤからの考察、とても興味深く読ませていただきました。
ちゃちゃきさんは、アクセシビリティとユーザビリティの違いについて、次のような仮説をまとめています。
まとめると、アクセシビリティとは「(あるユーザーが)その情報があるであろうルートの入口を見つけること」であると考えられないだろうか。この場合、ユーザーは特定できない。誰かがアクセスしやすい、といった視点ではなく、あらゆるユーザーがまず情報の入口に立てなければならない、というスタンスであるからだ。この考え方を進めると、ユーザビリティは「入口に立ったあるユーザーが、効率的に、正しくゴール(目標)=出口に到達できること」と考えることができる。
このアクセシビリティとユーザビリティの違いについては、ワタクシもよく質問を受けることがあります。両者は明確に線を引いて分けることができない面もありますが、あえて一言でその違いを説明するとしたら、アクセシビリティは使えるかどうか、ユーザビリティはその上で使いやすいかどうか、分かりやすいかどうかという感じでしょうか。よくそんなふうに回答しています。
W3C勧告の『WCAG 2.0』では、イントロダクションで次のように述べています。
また、このガイドラインは、加齢により様々な能力が変化している高齢者にとってもウェブコンテンツをより使いやすくするものであり、しばしばユーザ全般のユーザビリティを向上させる。
たしかに、『WCAG 2.0』の達成基準(JIS X 8341-3:2010の達成基準も同じ)の中には、例えば以下に挙げた例のように、ユーザビリティともいえるものが幾つか含まれています。
- 2.4.2 ページタイトル (レベルA)
- 2.4.5 複数の到達手段 (レベルAA)
- 2.4.6 見出し及びラベル (レベルAA)
- 3.2.3 一貫したナビゲーション (レベルAA)
- 3.2.4 一貫した識別性 (レベルA)
これらはユーザビリティのガイドラインでも同様なポイントが記されていたりします。『WCAG 2.0』には、認知・学習・言語障害のあるユーザーを想定した達成基準があり、特にそういった部分においてはアクセシビリティとユーザビリティがオーバーラップすることが多いように思います。
この記事のタイトルにもなっている、『「入口まで」と「出口まで」のデザイン』。アクセシビリティが「入口まで」、ユーザビリティが「出口まで」のデザインという仮説は、ウェブサイトを建物に例えることでも説明できるかもしれません。
よくHTMLは建物の骨組み、CSSは外観や内装などの装飾と例えられることがあります。アクセシビリティはその建物の入口で、ユーザビリティはその建物の中の使い勝手や利便性と例えることができるでしょう。どんなに建物の中が素晴らしくても、入口に階段や段差があったら例えば車椅子の人や歩行に困難を伴う人は、そもそも建物の中に入れないかもしれません。入口が回転ドアだけだったら、やはり中に入るのが困難な人もいるでしょう。その建物をさまざまな人が利用するという前提があれば、段差をなくしたり、回転ドアではなく左右に開く自動ドアにしたりすることが自ずと要件になってくるはずです。
ウェブサイトの場合、これだけデバイスが多様化してくると、この「入口」でその多様性に対応することの重要度が高まるばかりです。より多くのデバイス、より多くのユーザーエージェント、より多くの設定、より多くの場面をサポートして、より多くのユーザーが使えるようにすることがますます不可欠になってきたとも言えます。
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