電子情報技術や雇用、建築などの分野におけるアクセシビリティの専門家である、シンシア・ワデル(Cynthia D Waddell)さんが、2013年4月3日に亡くなられました。
彼女は、障害に関わる法律、政策、技術などの専門知識を活かして、政府、教育機関、企業に教育やコンサルティングのサービスを提供していました。米国内外の政府・大学・産業界が主催するフォーラムや会議などで数多くの講演も行ってきました。
さらに、1998年の「Top 25 Women on the Web」をはじめとする様々なアワードを受賞したり、国連及び障害者の権利を守る国際条約を策定する機関のコンサルタントを務めたり、米国連邦政府などの会議にアクセシビリティの専門家として参加したり、その功績は挙げればきりがないほどです。
ウェブアクセシビリティの世界では、米国で最初のアクセシブルなWebデザイン・ガイドラインを書き上げたことで知られています。これは後に、米国のリハビリテーション法508条といった法律の制定にも道を開くことになり、米国連邦政府がベスト・プラクティスとして認めたものでした。
また、米国のクリントン政権に委託されて執筆した論文「障害のある人々のアクセスにおけるデジタルデバイドの拡大:社会参加を阻む障壁を克服する」は、数多くの言語で翻訳され、世界各国の政府、大学、障害者団体、企業などで引用されているそうです。
彼女は、海外諸国ではもちろん、日本のアクセシビリティ関係者の間でもその名が知られていました。2004年に日本でウェブアクセシビリティのJIS規格(JIS X 8341-3)が制定された際には来日して、東京で開催されたシンポジウムに参加したり、国会議員の会合で講演したりしたこともありました。
主な共著には「Web Accessibility: Web Standards and Regulatory Compliance」 (Apress 2006) や「Constructing Accessible Web Sites」 (Glasshaus 2002)などがあり、前者は日本語訳されて2007年に日本でも出版されました。また、彼女の名前にちなんで名づけられた「Cynthia Says」というアクセシビリティ・チェックツールもあります。これは無償で利用できるオンラインのツールで、米国盲人評議会も推奨しているツールでした。