メルマガ第83号を発行しました!

こんにちは!2016年2月10日(水)にAccSellメール・マガジン第83号を発行しました!

[連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
第80回: 視覚障害者とプレゼンテーション (1)
[連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
第40回: Webアクセシビリティが無視されすぎで気にくわない。
[連載]山本和泉の「解説放送レビュー:観たり聞いたり歌ったり」
第2番組目: NHK『ためしてガッテン』2016年2月3日放送分から

[連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
第40回: Webアクセシビリティが無視されすぎで気にくわない。

Webアクセシビリティが無視されすぎ!

1月30日にSlideShareで公開されたスライド『Webアクセシビリティが無視されすぎで気にくわない。』。この原稿を書いている時点で、14,000ビューを超えていますので、このメルマガの読者の皆さんならご覧になられた方も多いのではないでしょうか?

このスライドは、uenoyuukiさんが勤務先の社内勉強会のために作成したもので、後日その反響ぶりに応えるかたちで、ブログで経緯や意図の補足説明をされています。

SlideShareのページで「基本的には、いつものとおり、愚痴。」とご本人が書かれていますが、今回はこのスライドを見ながら思ったことや感じたことなどを書いてみようと思います。

1. はじめに

おそらく皆さんもご存知のティム・バーナーズ=リーの言葉を引用したりしながら、そもそもWebアクセシビリティとは?というイントロダクションから始まります。

そもそも、Webそのものは、概念と存在そのものがアクセシブルなものなので、 "Webアクセシビリティ"などといった言葉があること時点で違和感を覚えるが、 まぁ、そういうものなんでしょう。

情報を伝達するメディアとして考えれば、新聞、雑誌、カタログ、チラシなどの紙に印刷された情報よりも、Webで提供される情報はよりアクセシブルだといえます。ブラウザの設定や機能で文字サイズを変更できたり、文字色と背景色を変更できたり、スクリーンリーダーで合成音声に変換したり、点字に変換したりすることができます。情報の受け手が、自分の好きなカタチで情報を受け取ることができるのは、Webならではでしょう。

テキストを画像にしたり、自分にしかわからない言葉を使ったり、独自グリッドでのレイアウトで作ったり、作り手の勝手な構造をもったり、作り手によって、わざわざ非アクセシブルにしている! わざわざ手間をかけて、質の低いものを!

初期のWebは、テキストだけのごくごくシンプルなものでしたが、画像を使えるようになり、FlashやPDFなんかが出てきたり、スクリプトでいろんなことができるようになったり、気がつけば何でもあり状態になっていたのは皆さんもご存知の通り。だから、そもそもWebはアクセシブルなはずなのに、筆者が違和感を覚える「Webアクセシビリティ」っていう言葉が出てきたんでしょうね。

Webにかぎらず、派手なものがどうしても注目を集めますし、新しいモノが脚光を浴びるというのが世の常。

作り手の勝手な都合で、WWWの思想を捻じ曲げ、信念を無視し、使う人を踏みにじることが、アイディンティティと言えるのだろうか? 仕事だから、売上のために、流行りだから、そう自己正当化し、挙句には「自分が気に入るものが世界が求めているものだ。」と勘違いしている人間の、なんと多いことか。

ここ数年で感じるのは、やはりカルーセルでしょうか。勝手に表示が切り替わって全部読めない、キーボードだけでは操作できない、スクリーンリーダーではほとんど意味不明...。ユーザビリティテストをやっていても「これ、やめてほしいんですよね」と言う人は何人もいましたけど、「これ、いいですよね!」なんて言う人には会ったことがありません。皆さんはどうでしょうか?

それでも、限られたスペースを有効に活用できるというコンテンツ提供者側の論理というか、都合を利用者に押しつけるようになってはや数年。一時の流行でそのうち姿を消すかと思いきや、まだまだ使われていますね。今や、HOMEページの定番ウィジェットにさえなっている感があります。ま、そういう事情があるのはよく分かりますし、実際の案件でもできるだけアクセシブルにして、少しでも多くの利用者が使えるようにといろいろ試行錯誤を繰り返しているわけですが。

2. 少し、世界のデータを見てみる

単純に興味深いデータだなと思ったのが、「言語の壁」。ここでもやはり中国恐るべし。普段話されている言語としては、中国語が12億1300万人で断トツ。2位のスペイン語が3億2900万人、3位の英語が3億2800万人ということで、意外と英語って少ないんですね。そして、日本語が1億2200万人で9位にランクインしています。こうして見ると、日本語って意外と多いんですね。

そして、自動翻訳技術や音声認識技術などの進化によって、こうした言語の壁は年々崩れてきているようにも感じます。それでも、自分の英語力なんかを考えると、まだまだ言語の壁は厚くてデカいんですけどね...。

Google Translate API は、50種類以上の言語の翻訳できる。しかし、難しい表現、長すぎる文書、言語独特の言い回しなどは、正確な翻訳が出来ないため、 簡単で短く、主語述語がある読みやすい文章で書かれてあるとよい。 これは、ネイティブ言語だけであっても、全く同様のことが言える、最も基本的なことである。

前回のワタクシの連載、あ、前回のメルマガではこの連載をお休みしてしまい申し訳ありませんでした。前回のワタクシの連載でも、日本語の読みやすさをテーマにしたブログ記事をちょうど紹介しましたが、個人的にも最近意識しているところです。機械的に翻訳しやすい文章を書こうとすると、自ずと簡潔で分かりやすい文章になります。この連載がどうかは置いておいて(苦笑)

ライティングのテクニックというか、文章の書きかたについては、どこかで時間を作って掘り下げて考えてみたいなと思っております。文章自体の読みやすさもそうですし、スマホやPCの画面で表示されたときの読みやすいレイアウトとか、行間とか、体裁とか。

そして、「環境の壁」。

インターネットの普及率をみてみると、世界全体での普及率は23.44%とされている。また、2014年の第4四半期のネットワーク接続速度の全世界平均データでは、4.5Mbpsが世界平均で、各地の最高速度を平均すると26.9Mbps。これは、はるかに多くの人が、これから初めて、決して早いとは言えない環境で、インターネットやWebサイトに触れるということを、念頭に置く必要があることを示唆している。

なるほど。世界全体で見ると、まだそんな感じなんですね。日本国内だけで見ると、どんな感じなんでしょうか。

3. 日本の話も少し

ということで、日本のデータもいくつか紹介されています。

インターネットの利用状況 (出典:総務省) 平成26年末のインターネット利用者数は、平成25年末より26万人減少して10,018万人(前年比0.3%減)、人口普及率は昨年末と同様82.8%となった。また、端末別インターネット利用状況をみると、「自宅のパソコン」が53.5%と最も多く、次いで「スマートフォン」(47.1%)、「自宅以外のパソコン」(21.8%)となっている。

この総務省のデータは、おそらく毎年公開されている通信利用動向調査ですかね。人口普及率は高く、利用している端末はやはり「スマートフォン」が年々増加してきているのは、皆さんもご存知の通りです。

4. 昨今のUXについても少し

UXを考慮するのであれば、人とは何か、人はどう感じ、考えるか、といった、文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用できるように配慮するユニバーサルデザインは、まずもって前提としてあるべきなのである。

UX、HCD、ユニバーサルデザインといったキーワードが出てきます。こういった話になると、いつも脳裏に浮かんでくるのは「誰のためのデザイン?」という有名な書籍のタイトル。いずれにしても、そのWebコンテンツを誰がどんなふうに利用するのか?というところを今一度しっかり考えるべきなのでしょうね。

そういえば、最近よく考えるのが "situational disability" という考えかた。"disability"の"dis"というのは接頭辞で、「~ではない」、「~の無い、反対の」、「~の状態を解除・除外した、奪う」といった意味。"ability"は、「能力」、「できること」といった意味。

"disability"は、"people with disabilities"というと、障害のある人という意味で使われます。ですが、「障害のある人」という切り口ではなく、~できない、あるいは~しづらいという切り口で考えたほうがよいのではないかと。"situational disability"というと、「場面や状況によって」~できない、~しづらいということで、これはJIS X 8341-3:2010の「適用範囲」にある「一時的な障害のある人」にも通じるところです。

余談ですが、JIS X 8341-3の初版である2004年版の初期のドラフトでは、この「~できない」、「~しづらい」という切り口で、Webコンテンツに対する要求事項が分類されていたりしました。規格として見た場合には、その分類でいくと同じ要求事項が繰り返し出てきてしまうこともあって、お蔵入りになってしまったのですが、Webアクセシビリティとは?を考えるときには分かりやすい分類かもしれません。"situational disability"に話を戻すと、昨年の10月にこんなツイートがありました。

"By designing for someone with a permanent disability, someone with a situational disability can also benefit."

これは、現在Microsoft EdgeのWebプラットフォーム・エンジニアとして活躍しているDavid Storey氏のツイート

そういえば、今日のある打ち合わせで配られた資料がワタクシにはとても読みづらかったのです。文字色が超薄くて、しかも文字サイズがとても小さく...。老眼鏡を持参していなかったワタクシにはほぼ読み取ることができませんでした。老眼鏡をかけても辛かったかもなあ。

文字色と背景色のコントラストって、アクセシビリティのガイドラインのWCAG的にはロービジョンや色弱の人を想定しているわけですが、そうじゃない人にとっても重要なんですよね。老眼鏡はワタクシにとっての支援技術であり、その老眼鏡がない状態というのは"situational disability"といえます。

それに、仕事場では老眼鏡がなくてもスマホで問題なく読めていたWebページが、外出先では光の具合によって同じWebページなのに読みづらいなんてことも最近よくあります。これも"situational disability"といえるでしょう。老眼のおかげで、そんな経験が増えてきた今日この頃です(苦笑)

つづきはメルマガで……。

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