こんにちは!2015年12月9日(水)にAccSellメール・マガジン第79号を発行しました!
- [連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
- 第76回: 文書作成に対するニーズの変化
- [連載]植木 真の「こんなブログ記事見つけました!」
- 第37回: A Guide To Simple And Painless Mobile User Testing
[連載]中根雅文の「全盲のコンピュータ利用に関する四方山話」
第76回: 文書作成に対するニーズの変化文書作成については、以前詳しくお話ししたことがあります。連載32回では、印刷する必要がない文書の作成について、連載33回では、印刷する必要がある文書の作成について説明しました。
ただ、これらはいずれも僕の主な使用環境がWindowsになる前の話です。僕が主にWindowsを使用するようになった時期には、世の中ではWindowsが当たり前に使われるようになっていましたし、PCのユーザーも随分増えていましたので、文書作成に対するニーズもいろいろと変化してきていました。
今回は、僕の文書作成に対するニーズの変化、そしてWindowsを主な環境として使用するようになった後の文書作成について紹介します。
僕の文書作成に対するニーズ、4つの段階
これまでに紹介した内容と重なる部分もありますが、僕の文書作成に対するニーズがどのように変化してきたのかということをまずお話ししておきます。
大ざっぱにいうと、コミュニケーションを取る相手の変化に伴って、4段階でニーズが変化してきたと考えることができます。
第1段階
第1段階は、単純に独力で墨字を書きたいというニーズでした。
これは、僕が高校生の頃のことです。それまで点字でしか文書作成をしたことがなく、そのため点字を読めない人とのコミュニケーションの手段がきわめて限られていました。この頃、墨字が必要なコミュニケーションの相手は、基本的に盲学校の教員とか、ロービジョンで点字が読めない友人とかいった人たちでした。彼らは、僕が点字使用者であることも、僕が墨字の文書作成における常識的な知識を持ち合わせていないこともよく分かっている人たちですから、とにかく書きたいことを墨字にできればそれで良かった、というような状況でした。
墨字を書けなくても、日常生活においては特に困ることはありませんでしたが、ちょっと長い文書のやり取りや、共同で文書作成をしなければならないような場合には、この状況は不便きわまりないものでした。
ただ、当時は本当に単純に墨字が書ければよく、レイアウトやその他の見た目を気にするようなことはありませんでしたから、スクリーン・リーダーで使えるテキスト・エディターがあれば充分でした。
第2段階
第2段階は、印刷する必要はないものの、それなりにレイアウトを気にして文書作成を行いたいというニーズでした。これは高校を卒業して、主に文書をやり取りする相手が盲学校とは関係の無い人たちに変わって出てきたニーズです。
このような人たちの多くは、パソコン通信で知り合った人たちです。彼らは、僕が墨字文書作成の常識を持ち合わせていないということを知らない場合も多いですし、そもそも僕が視覚障害者だということも知らない場合も少なくありませんでした。ですから、「視覚障害者なのだから仕方がない」というようないいわけをして、見た目が悪いだけならともかく、その結果として読みづらかったり分かりづらかったりする文書を渡すわけにはいかなくなったという事情があります。
ただ、当時のパソコン通信でやり取りされる文書は単なるテキスト・ファイルでした。ですから、ワープロを使った文書作成のように書体とか文字のサイズとかいったことを調整することがそもそもできませんから、そういったことを気にする必要はありませんでした。気にしなければならなかったのは、行の長さやレイアウトくらいのものでした。
連載32回で紹介したように、このニーズを満たすために、僕はxtrというフリーウェアを使っていました。xtrを使うことで、行長などは特に気にせずに文書を書いて、最後に適切に整形するということが可能になりましたので、この時点での僕のニーズは充分に満たすことができました。
第3段階
第3段階は、印刷を目的とした文書作成をしたいというニーズでした。
これは、大学に入学して、文書をやり取りしてコミュニケーションを取る相手が、オンライン中心だったものがオフラインにも広がった結果出てきたニーズです。
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