こんにちは!2018年2月14日(水)にAccSellメール・マガジン第131号を発行しました!
- [連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
- 第109回: 視覚障害者と読書 (9)
- [気まぐれコラム]植木 真の「最近気になるテクノロジー」
- 音声アシスタント 編
[連載]中根雅文の「全盲のコンピューター利用に関する四方山話」
第109回: 視覚障害者と読書 (9)前回は、僕が今でも最新のIT関連技術書を読むのに大いに活用しているSafari books Onlineについて紹介しました。このサービスは、視覚障害者も問題なく利用できる一般向けのサービスです。
一方、アメリカにはこれとは異なり元々視覚障害者やディスレクシアなど、読書に困難がある人たちを対象にしたBookshareというサービスもあります。僕自身は、後述する理由もあってこのサービスを利用したことがないので細かいところで分からない点もあるのですが、今回は、このBookshareについて紹介します。
Bookshareの登場
ちょっと調べただけでは正確なところが分からないのですが、僕が初めてBookshareについて耳にしたのは1999年か2000年のCSUNでのことだったと思います。(Bookshareの著作権表示を見ると "2000-2018" となっていますので、だいたいこの頃にサービスが始まったのだと思います。)その時聞いたのは、アメリカで広く使われていた視覚障害者向けOCRシステムの1つ、OpenBookを開発、販売していたArkenston社のJim Fruchterman氏がBookshareというサービスを始めたということ、このサービスでは書籍をスキャンしてOCR処理したデータをボランティアが校正して蓄積し、視覚障害者が利用できる形で提供するということでした。
この時点では、まだこのサービスがどれくらいの規模のものになるのか、どのように運営されるかなど分からないことも多く、視覚障害者の書籍アクセスにどの程度のインパクトを与えるものになるのか、全く予想できないなという印象をうけました。その一方で、Fruchterman氏がこういう取り組みに乗り出すという話には必然性もあり、ある種の本気さも感じましたので、これは期待しても良いのではないかという気がしたのも確かです。ただ、連載第107回 (第127号掲載)でも触れたように、これまで複数の似たようなサービスが現れ、そして知らないうちに消えていったという事実を知っていただけに、Bookshareもそんなサービスの1つになってしまうのではないかという不安も感じたことを覚えています。
以前にも触れたことがありますが、僕は2001年の春から2002年の春にかけてアメリカの盲学校でインターンのようなことをしていました。Bookshareがサービスを始めてしばらく経っていた時期ですが、この時点ではまだ、少なくとも僕の周囲にはこのサービスを活用しているという人はほとんどいませんでした。ですからこの時点でもまだ、僕はBookshareについてあまり期待しないようにしていました。(もちろん実際にはかなり期待していたのですが。)
言うまでもなく著作権の問題がありますので、誰でもBookshareにアクセスして利用できるというわけではありません。これは今でもそうだと思うのですが、アメリカ国内で学ぶ視覚障害がある学生は、比較的簡単な手続きで利用登録ができたようです。一方僕が利用登録するのは、少なくとも当時はかなり面倒な話だった記憶があります。そのため、ちょっと使ってみたいとは思ったものの、結局その時は利用登録をあきらめました。
Bookshareの発展
おそらくちょうどこの時期のことだったと思いますが、Fruchterman氏はBenetechという非営利の会社を立ち上げ、Bookshareの運営はこの会社が中心となって行われるようになりました。いわば本腰を入れてBookshareの運営に乗り出した、という感じなのだという印象を受けたのですが、やがて僕は日本に帰国し、しばらくBookshareのことは忘れていました。
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