[ソフトウェア レビュー] HOME'S(ホームズ) アクセシビリティ対応版

2014年5月 6日

投稿者:中根雅文

不動産・住宅情報サイト「HOME'S」を運営する株式会社ネクストが、4月21日、iPhone用の賃貸物件検索アプリケーション、「HOME'S(ホームズ) アクセシビリティ対応版」をリリースした。同アプリは、VoiceOverを用いた使用が考慮されている他、iOS 7以降のズーム機能にも対応しているという。本稿では、VoiceOverを用いて使用する場合を中心に、このアプリの使用雑感をお届けする。

「HOME'S(ホームズ) アクセシビリティ対応版」の概要

「HOME'S(ホームズ) アクセシビリティ対応版」は、不動産情報サイトHOME'Sに掲載されている賃貸物件情報を検索することができるiPhone用のアプリだ。路線、駅/市区町村を指定しての検索や、間取り、築年数、家賃、駅からの徒歩分数などの条件による絞り込みができるようになっている。

物件の詳細情報画面では、間取り図や建物の外観写真なども提供されている。

また、iOSのVoiceOverや、iOS 7以上のズーム機能と併用した場合でもスムースに使用できるように作られているのが大きな特徴だという。

同アプリは、iTunes App Storeで提供されており、無料で利用することができる。 (本稿執筆時点)

レビュー環境

レビューは、同アプリのバージョン1.0.0 (初期バージョンで本稿執筆時点での最新版) を、iPhone 5s上のiOS 7.1.1にインストールして行った。

起動とトップ画面

アプリをインストールすると、ホーム画面に「ホームズ アクセシビリティ対応版」という名前でアプリが現れる。

アプリを起動すると、「地域から探す」か「路線から探す」かを選ぶトップ画面が表示されるので、目的に応じたボタンを押す。

この画面には、この他に「使い方」と「このアプリについて」というボタンも配置されている。

トップ画面以外の画面構成

このアプリでは、全ての画面が一貫した構成になっており、基本的には以下の要素が配置されている。

  • 画面タイトル: 画面最上部の中央に配置されており、VoiceOverが見出しとして認識できるようになっている。
  • 「使い方」ボタン: 全ての画面の右上に配置されており、このボタンを押すと表示中の画面の簡単な使い方を説明するダイアログが現れる。ダイアログの末尾にある「閉じる」ボタンを押すことで、元の画面に戻ることができる。
  • 「戻る」ボタン: トップ画面を除く画面の左上に配置されており、このボタンを押すと1つ前の画面に戻ることができる。
  • 「検索トップに戻る」ボタン: トップ画面以外の画面では、画面タイトルの真下に配置されているこのボタンを押すと、トップ画面に戻ることができる。この際、「検索を最初からやり直します。よろしいですか?」という警告が表示され、ここで「OK」を押すとトップ画面に戻ることができる。

検索地域を絞り込みやすくする工夫

「地域から探す」場合も「路線から探す」場合も、まずは対象の都道府県を選択する必要がある。

「地域から探す」または「路線から探す」を押すと、「北海道・東北」、「関東」、「北陸・甲信越」、「東海」、「近畿」、「中国・四国」、「九州・沖縄」のなかから目的の地方を選ぶ画面が表示される。ここで地方を選ぶと、続いてその地方に属する都道府県のなかから目的の都道府県を選択する画面が表示される。

このように、地方選択の画面を挟むことによって、47都道府県全てのなかから1つを選ぶという操作をする必要がなくなっており、容易に目的の都道府県を探すことができるように工夫されている。

地域から探す場合は、都道府県を選択すると、その都道府県に属する市区町村が五十音順で表示される。この画面では、各市区町村の頭文字が、VoiceOverで見出しとして認識できる形で表示されている。例えば、東京都の画面で新宿区を選びたいような場合は、まずローターを「見出し」に設定した上で、1本指の上下方向へのフリックで「し」を探し、その後1本指の左右フリックで「新宿区」を探すといったことができる。

ここで市区町村を選択すると、続いて物件の条件を指定する画面が表示される。

一方、路線で探す場合は、都道府県を選択すると、路線を選択する画面が表示される。この画面では、路線名が鉄道事業者ごとにまとめられていて、鉄道事業者名がVoiceOverで見出しとして認識できる形で表示されている。したがって、ローターを見出しに設定した上で、1本指の上下フリックで鉄道事業者を探し、続いて1本指左右フリックで目的の路線を探すことができる。

路線を選択すると、続いて駅を選択する画面が表示される。この画面では、駅がその路線の始発駅から順に並べられている。

駅を選択すると、続いて物件の条件を指定する画面が表示される。

条件の指定画面

物件の条件を指定する画面にも、他の画面と同様、「画面タイトル」、「使い方」ボタン、「戻る」ボタン、「検索トップに戻る」ボタンが配置されている。これらに加えて、「検索する」ボタンが、「検索トップに戻る」ボタンの右、「使い方」ボタンの下に配置されている。

多くの条件を指定できるようになっているが、全ての項目は任意で、なにも指定せずに「検索する」ボタンを押すこともできる。

検索条件はグループ化されており、ここでも各項目が見出しとして認識されるようになっている。必要な項目を見出しジャンプで探し、その下にあるチェックボックスやプルダウンを調整することで、絞り込み条件を指定できるようになっている。

必要に応じて条件を設定した上で「検索する」ボタンを押すと、該当する物件の一覧画面が表示される。

物件一覧画面

物件一覧画面では、「検索トップに戻る」ボタンのしたに、該当する物件の数が表示され、その下に、建物ごとにまとめて物件情報が表示される。

各物件は、まずそれがこの一覧での何件目かという情報に続いて、アパート、マンションなどの物件種別が表示される。この部分が見出しとして認識されるようになっているので、読み飛ばして行くのも比較的容易だ。

次の行には、物件名、所在地などが表示される。

その次の行には、この建物の空き物件数が表示される。

続いて、掲載されている物件 (アパートやマンションであれば部屋) の、1件ごとの間取り、面積、階数、家賃などが表示される。

同じ建物に複数の物件がある場合は、1行に1物件という形で表示され、4件以上の物件がある場合には、最初の3件だけが表示され、4件目以降については「他の物件を見る」というボタンを押して表示するようになっている。

ここで、目当ての物件が見つかった場合は、その物件を押すと、詳細情報が表示される。

物件詳細画面

物件詳細画面では、「使い方」ボタンの下に「電話でお問い合わせ(無料)」というボタンが表示される。このボタンを押すと、この物件の取り扱い業者への発信を確認する画面が表示される。

この他に、物件に関する詳しい情報が表示されており、間取り図や外観写真などがある場合には、物件名の下に、これらを表示するためのボタンも表示される。 (このボタンには「物件の画像、12枚の画像があります」といったラベルが付けられている。)

画像一覧画面

画像一覧の画面には、その物件に登録されている画像が並べて表示されている。各画像には、例えば「間取り(1/12枚)」といったラベルが付けられているので、どのような画像が表示されているのかを判断できるようになっている。しかし、各画像の詳しい説明は提供されていないので、画面を見ることができないユーザーが詳しく知りたいような場合には、晴眼者に画像を見せて説明してもらうといったことが必要になる。

一般向けHOME'Sアプリとの比較

HOME'Sのアプリには、本稿で紹介した「アクセシビリティ対応版」の他に、もともと一般向けに提供されているものがある。このアプリは、テキスト・ラベルが付与されていないボタンが多く見られるなど、VoiceOverでは使いやすいとはいえないものだ。しかし、機能面で比較してみると、アクセシビリティ対応版にはない機能が多く搭載されている。

例えば、検索対象として、賃貸物件だけではなく、土地を含む販売物件が含まれていたり、GPSと連動して現在値付近の物件を探すことができたり、指定した地域の家賃相場を確認したりすることができる。また、最近見た物件の一覧表示や、「お気に入り威物件」を保存する機能、物件を見学した際のメモを残すことができる機能なども提供されている。

さらに、検索面でも、複数の路線 (最大5路線) を指定できるなど、アクセシビリティ対応版よりも高機能になっている。

VoiceOverを用いるユーザーがテキストを中心とした情報を求めるのに対して、晴眼者は写真なども重視する傾向があるのは間違いないことであるため、ある程度情報の見せ方を変える必要があるということは理解できる。情報の表示方法をVoiceOverが使用されているかどうかで切り替えることは技術的に可能なものの、そのような仕組みを実装することで、プログラムがより複雑になり、場合によっては不具合を起こしやすくなってしまうようなことも充分に考えられるため、別のアプリとして提供するという方法が適切なのかもしれないが、機能面で大きな差がある点は残念である。

とはいえ、VoiceOverユーザーにとって使いやすいアプリが提供されているということは充分評価すべきだ。今後、一般向けアプリに搭載されている機能が追加されていくことに期待したい。

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